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施設長の資格

介護付き有料老人ホームでの施設長の経験が長い僕は過去を振り返り思うことがある。何をもって施設長になることを推薦されたのだろうか。今日は施設長について考える。僕は介護職員から始まり担当するフロアのリーダーを経て施設長を拝命した。僕と同じように今ある民間介護施設の施設長は大半が現場の経験者だろう。これは現場を知っている人が施設長を任されることで入居者に近い運営に期待したり、現場職員がキャリアアップしていく組織として納得感をもってもらいたいと目的を持った法人の考えだ。しかし、施設長になる前に現場で教わることはマネジメントではない。体系化された組織ではあるが、キャリアアップする為の準備段階においてのバックアップは多いとは言えないだろう。それはリーダーの不足や施設長が不足していて人がなかなか育たないという声を多く耳にしているからだ。最近は法人との相談の場で耳にしないことはない。以前から課題としては認識されてきたが施設の数が増え続ける中、現場だけでなくマネジメントする人間も不足していると感じている法人が表面化してきているということだろう。さて現場でキャリアアップしにくいことについて分析する。現場では絶え間なく変化する入居者の体調や精神に気を配り、チームでのアプローチを日々探っている状況にある。施設としては入居者へのサービス提供をする人的リソースとして位置づけられていて、その中でもチームを意識したり入居者や家族からの信頼が厚い職員がリーダーへと昇格していく傾向だ。これは施設長になる場合においても同様で、木を見ることに長けている人材であるということが言える。一方で森を見ることが分からず、中長期的な視点に立って物事を判断するための訓練を受けていないことがある。そのためか、施設長になってからも現場で介護に従事している事業所もある。これは大きな問題として捉えなければならない。施設長は施設の管理者であり、入居者と職員、サービスと施設に関わる全般に目配りしなければならない。けっして現場で人が足りないことを言い訳にして現場に従事することなどあってはならない。これが常態化していたり、万が一、法人にこの基本の考えがないようであれば大変危険といえる。施設長のすべきことが基本として身についていない場合は、目の前で起きている今までの自身の経験から導き出されるヘルプサインに対して自身をリソースとして活用しようという安易な発想に陥ってしまう。施設長は入居者の声を直接聞くだけでなく、職員や家族、地域の人の声なき声に対しても敏感になって常に気配り目配りをする役割がある。個人的には感情的になる人とのコミュニケーションではあまり敏感になりすぎない技術が求められると思っているが…。さて、施設長がすべきことは範囲も広く、優先順位もあるので一概には言えないが、持たなくてはならないモノが何か、については答えが出るだろう。特に必要なことを書き記し、施設長の資格として心得てほしいと思う。①覚悟「誰かが最期を過ごす場所を提供する覚悟、誰かが生活をするための就業場所を提供する覚悟」②感謝「出逢いに感謝、成長に感謝」③責任「自身を取り巻く環境で起きる全ての結果に対する責任」。どれも「人」が最重要であることは言うまでもない。