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悩んだ結果が生み出した暗闇

産経新聞に認知症の父を高速PAに置き去りし、娘が容疑者として逮捕された事件がある。記事によると認知症とみられる父親(79)を神戸市の中国自動車道のPAに置き去りにしたとして、保護責任者遺棄の疑いで、無職の女(46)を逮捕した。「自分が面倒をみるより、警察に保護してもらって施設に入った方がいいと思った」と容疑を認めている。逮捕容疑は22日午後6時45分ごろ、神戸市北区長尾町上津の中国道赤松PAで、父親にコンビニエンスストアに行くよう指示して乗用車から降ろし、置き去りにしたとしている。父親の健康状態に問題はない。同日午後10時40分ごろ、コンビニ店員が父親を保護。県警高速隊に通報があり発覚した。父親は認知症気味で、状況の経緯を説明できなかったが、自分の名前や生年月日、滋賀から来たことなどを思い出したため、これを手掛かりに捜査し、容疑者を特定したという。命に別状がなくてよかったと思う。この日の神戸は雨で気温は最高15度、最低10度で日の落ちた夜に置き去りにしたわけだから、命にかかわる事件につながっていた可能性は否定できない。死の可能性を分かった上で置き去り行為に至ったのではないかと勘繰ってしまう。しかし、この行為に至るまでには様々な悩みや葛藤があったに違いない。ひとりで悩み誰にも相談できない環境があったのかもしれない。日常では家の者以外と付き合いのない生活だったのかもしれない。誰かに悩みを打ち明けたり、助けてほしいというサインが出せれば事件は発生しなかったかもしれない。事件が発生した裏には容易に相談できる環境が存在しないという地域社会の不整があるのだろう。同じ事件が起きぬように地域で困っている方やそれに気づきにくい人がいないか、声をかける取り組みをしなくてはならない。誰も犯罪者にはなりたくないし、娘を犯罪者にしたいと思う父親など存在しないのだから。